2018年度の安全重点施策

 2018年度は、4年を期限とする新しい『中期安全推進計画』(2017年度〜2020年度)の2年目として、2017年度までの取り組みの深度化を図るとともに、2017年度に発生した事故や故障等の原因分析に基づく対策を徹底し、『2018年度 安全推進計画』の重点実施項目を着実に実施することで、目標達成に向け全社員が一丸となり取り組みました。

  主な「ハード対策」

1 誤出発防止対策

 2016年度、安全側線が設けられていない箇所の誤出発防止対策(誤出発防止用ATS地上子の設置等)を強化するとともに、安全側線が設けられた箇所にも誤出発防止対策を実施しています。2018度は23駅で対策を実施し、2019年度は22駅で計画しています。
今後も、誤出発に伴う列車衝突事故及び列車脱線事故を防止するため、計画的に誤出発防止対策を実施していきます。
誤出発防止

2 車両の安全対策

■ 運転士異常時列車停止装置
 列車に乗務している運転士に疾病等の異常が発生し、運転操作が継続できなくなった場合に自動的に列車を停止させる装置を設置しています。2018年度末までに、整備対象車両362両のうち351両(整備率97%)の設置が完了しました。
■ 運転状況記録装置・誤通過防止支援装置
誤通過防止支援装置 2006年7月の省令改正に伴い、列車の運転速度やブレーキ操作等の運転状況を記録する装置の設置が必要であるため、『運転状況記録装置』を開発し順次設置しています。
 また、停車駅通過等を未然に防止する機能を持たせた、『誤通過防止支援装置』も併設しています。2018年度末までに、整備対象車両362両のうち320両(整備率88%)の設置が完了し事故防止及び原因等の究明に役立てています。

3 災害防止対策

■ 強風
 本四備讃線など、台風や季節風などで運転を規制する区間に列車を停車させない取り組みとして、2012年8月より『風予測システム』を導入し、早め規制により安全安定輸送に努めています。
強風
■ 大雨
のり面防護工 台風等による大雨の対策として、のり面(山を切り取った斜面・土盛でできた斜面)の状態を定期的に点検しています。
また、その点検結果をもとに、のり面を安定させるための対策として「のり面防護工」を施工しています。2018年度は予讃線2箇所、土讃線2箇所、予土線1箇所の計5箇所について施工しました。
■ 落石
落石防止網 落石に対する対策として、危険箇所を定期的に点検しています。その点検結果をもとに、落石に備える対策として「落石止さく」、「落石防止網」を施工しています。2018年度は予讃線1箇所、土讃線5箇所、徳島線1箇所、予土線1箇所の計8箇所について施工しました。
■ 地震
高架橋柱の耐震補強 大規模地震対策として、鉄道橋や高架橋の耐震対策を実施しています。道路等と交差する鉄道橋や高架橋に対し、落橋防止を目的とした耐震対策を1996年度から行い、これまでに41箇所の対策を完了しました。また、予讃線宇多津高架では、地震による高架橋の柱の損傷を防止するために、2018年度は柱72本の耐震補強を行いました。本四備讃線における耐震補強は、2014年度末から工事に着手し、桁の落橋防止対策、高架柱や橋脚に対する耐震補強等を実施しています。駅設備では、2018年度に丸亀駅、今治駅の天井落下防止工事を行いました。
 また、2009年3月1日より、気象庁が情報提供している緊急地震速報を活用した『早期地震警報システム』を導入しています。地震発生前に、揺れが予想される区間を走行している列車に対し、列車無線装置で自動的に緊急停車を指示するもので、列車無線装置の未整備線区では携帯メール機能を活用しています。システム導入前までは、地震が発生してから列車を停止させていましたが、現在は地震が到達する前に列車の停止手配を行うことが可能となりました。
■ 津波
津波 近い将来、高い確率でマグニチュ−ド9クラスの地震の発生が予想される南海トラフ地震による津波に備え、各自治体のハザードマップを参考にして、線路の浸水が予想される区域に「津波浸水予想区域標」を設置しています。
 また、線路の浸水が予想される区域を走行中の列車に対し、運転席に設置してある『GPSトレインナビ』に“津波浸水区域走行中”を表示させることで、運転士に注意を促し“もしもの時”の迅速な対応に役立てることとしています。
 さらに、2011年3月11日に発生した東日本大震災後、各自治体が定めたハザードマップを基に、津波浸水予想区域の見直しと避難マップの作成を行いました。現在は、自治体の見直しに合わせて適宜情報の更新を行っています。
 2016年3月には、線路内からの避難出口を示す方向標や指定避難場所への避難経路を示す標識の設置を完了しました。
避難

4 踏切等の安全性向上対策

■ 踏切支障報知装置等の整備
 JR四国には、2018年度末現在で1,321箇所の踏切があります。第1種踏切(警報機・遮断機のある踏切)は1,207箇所あり、全踏切数の91%を占めています。また、第1種踏切数の77%に当たる927箇所に『踏切支障報知装置』を整備し、このうちの83箇所に『障害物検知装置』を併設しています。これらの整備については、今後も計画的に進めていきます。

踏切支障報知装置等の整備
■ 踏切警報機(赤色灯)の視認性向上
 踏切の安全性向上対策として、踏切警報機(赤色灯)の視認性を向上させるため、警報灯の両面化や全方向踏切警報灯の導入にも取り組んでおり、踏切遮断桿折損が多発している踏切などから計画的に進めています。

【踏切警報機(赤色灯)両面化箇所数の年度別推移】
■ 踏切道の整備等
 踏切の事故防止対策として、2018年度は道路事業に合わせ踏切拡幅工事を2箇所で実施しました。

 第3種踏切(警報機があり遮断機のない踏切)と第4種踏切(警報機・遮断機のない踏切)については、道路交通量、鉄道交通量、踏切環境等を勘案しながら効果的かつ計画的に廃止又は第1種踏切(警報機・遮断機のある踏切)への改良等を進めています。

【踏切種別ごとの踏切数の推移】
■ 踏切内ペイント
 踏切内で閉じ込められ、事故に至るケースが多く見受けられることから、“踏切内「停車禁止」の意識付け及び踏切視認性向上”を目的に、ドライバーに注意を促すため踏切内ペイント(レンガ色塗色)を実施し、2018年度は7箇所の踏切に施工しました。今後も、順次計画的に実施していきます。
踏切内ペイント
■ テレビCM放映による踏切事故防止啓発活動
 春・秋の全国交通安全運動に合わせ、四国各県でテレビCM(「脱出編」と「列車防護編」)の放映を行いました。また、運転免許センターや自動車教習所に依頼し、啓発用DVDの放映も実施して踏切安全通行と踏切内で閉じ込められた場合の脱出方法等の啓発活動に役立てています。テレビCM放映
■ さく場道の安全対策
さく場道の安全対策 踏切以外で人が横断している「さく場道」については、防護柵及び通行禁止看板の設置を行うことにより、鉄道人身事故の防止を図っています。
 2018年度は予讃線14箇所、土讃線8箇所、徳島線1箇所、牟岐線4箇所の計27箇所で防護柵等の設置を行いました。
■ 連続立体交差化事業
 都市計画事業に伴う連続立体交差化事業については、高徳線栗林駅に続いて予讃線丸亀駅及び今治駅、高徳線佐古駅、予讃線坂出駅、土讃線高知駅が順次完成しています。
 また、2010年度から予讃線松山駅付近高架化工事に着手し、約2.4kmの区間を高架化することにより、8箇所の踏切が廃止され18箇所の道路と立体交差することとなります。

5 列車からの緊急避難支援装置の整備

 異常時等において、ホームのないところで停車した列車からお客様を避難誘導させる必要が発生した場合、お客様には「安全」「迅速」に列車から降車していただくこととなります。そのための支援設備として、「避難用シューター」を開発し「手すり付非常用はしご」とともに計画的な整備を進め、津波の危険性の高い牟岐線と土讃線を運転する全てのワンマン列車の車内に搭載しました。

【避難用シューター及び手すり付非常用はしごと車内収納】
避難用シューター及び手すり付非常用はしごと車内収納

6 駅ホ−ムの安全対策

■ 非常ボタンの設置拡大
 お客さまの駅ホ−ムからの転落等による傷害事故を防止するため、2017年9月予讃線の坂出駅に「非常ボタン」を設置しました。この装置は、急遽列車を停止させる必要が発生した場合、非常ボタンを扱うことにより、これに連動した非常報知灯が赤色点滅し、ホ−ム設置のパトライト(赤色灯及び扱ったところの黄色灯)が点滅、関係列車に危険を警告するとともに関係信号機に停止信号を現示する装置となっています。また、非常ボタンを扱った際には、ブザ−が鳴動し日本語と英語の音声案内が作動する装置となっています。
非常ボタンの設置拡大
■ 固定枠の設置拡大
 1日の乗降人員1万人以上の行き止まり駅(切欠きホ−ムを有する駅を含む)で、線路終端部の列車の止まらない箇所へ固定柵を設置し、ホ−ム上のお客さまの転落等による傷害事故の防止を図っています。
 2017年5月に徳島駅1番線に設置したのを始め、2017年度末までに高松駅の全てのホ−ムに設置を完了しました。

  主な「ソフト対策」

1 ヒヤリハット運動

 重大な事故の発生を未然に防ぐ取り組みとして、2006年8月から「ヒヤリハット運動」を推進しています。
 この運動では、作業中にヒヤリまたはハッとした事象(ヒヤリハット体験)や、安全に関して気付いた事象(安全に関する意見)などを収集し、社員全員で共有することにより事故防止に繋げています。
【ヒヤリハット運動で収集している情報】
■ 「ヒヤリハット運動」の深度化
 「ヒヤリハット運動」導入時からの報告件数は堅調に増加し、2014年度からは年間3,000件程度で推移しています。2018年度は、報告のしやすさと活用のしやすさを目指してヒヤリハット報告様式の見直しを行いました。その結果、報告件数が増加し総件数は過去最高となりました。
 また、引き続きリスクが高いヒヤリハットについては、本社内で情報を共有し対策の妥当性確認や水平展開を推進しています。
 今後は、具体的な報告を推進することで、ヒヤリハットのさらなる活用を目指すと共にタイムリーなテーマを決めてヒヤリハット報告を促すことで、リスクを認識する力の向上を目指していきます。

■ ヒヤリハット貢献賞
 ヒヤリハット運動の更なる活性化を目的として、「ヒヤリハット貢献賞」を関係職場に授与しています。2018年度は、17件の「ヒヤリハット貢献賞」を授与しました。
【改 善 事 例 その1】
概況:
駅停車の際にブレーキ操作が上手くいかずに停止位置を過ぎそうになり、非常ブレーキで停車しました。
同駅はブレーキ操作の目印となるものが少なかったため、ブレーキ目標を作成して設置しました。
【改 善 事 例 その2】
概況:
温水循環式のポイント融雪機に給油をする際に体勢を崩して怪我をしそうになりました。
そのため、給油タンクの土台に踏み台を設置したほか、ポリタンクを載せる場所が無かったため、給油台も設置しました。

2 リスクアセスメント

 リスクアセスメントは、職場に潜在するハザード(危険源・有害源)を探索し、その発生頻度や発生した時の影響などから対策の優先順位を判定する方法のことで、事故の未然防止活動の一つです。
 当社では、営業・運輸・工務全ての系統でリスクアセスメントに取り組んでいます。普段の業務でのヒヤリハットに加えて、ミスが起こりやすい場面と言われる「初めて」「久しぶり」「変化」の場面でのリスクを洗い出し、評価することで、リスクの大きさに応じた対策を講じるようにしています。

3 安全シンポジウム

 鉄道事業者にとって、「安全の確保」は事業運営の根幹であるとともに、すべてに優先する最重要課題です。
 この安全意識を更に高揚させる目的で、2019年2月22日『第12回安全シンポジウム』を社員及びグループ会社社員並びに四国運輸局、四国の各鉄道会社の方々など約100名に出席していただき開催しました。
 今回のシンポジウムでは、近年「ル−ル遵守の不十分」や「ル−ルの意味が理解できていない」ことによる運転事故及び労働災害が多発傾向であるため、テーマを「なぜ、ル−ルはあるのだろう」として開催するとともに、中央労働災害防止協会の四国支所長による特別講演「ル−ルを守らないとどうなるの」と題して、ルールを守らなかった場合のリスクと遵守方について貴重なご講演をいただき、運転事故及び労働災害防止に対する意識の醸成を図りました。

4 安全教育

 JR四国には、『研修センタ−』という教育の専門施設があり、各種の研修講座を開設し駅係員や乗務員、指導者及び専門技術者等、新入社員から幹部社員までの幅広い研修を実施しています。特に、鉄道係員にとって最も重要な安全意識の更なる向上や職責の重要性、並びに異常時における迅速で的確な判断力の教育などの安全教育を中心とした各種研修を実施しています。
 また、2020年度から稼働を予定している新研修センタ−では、運転士・車掌の訓練用シミュレ−タを新設するなど、乗務員教育の充実を図るとともに、各種訓練設備、実習線の新設等、教育及び訓練の充実を図ります。また、新研修センタ−内に「過去に発生した事故の風化防止」と「安全意識醸成および向上」を目的とした鉄道の安全に関する教育設備を設け、当社社員に加えグル−プ会社社員も対象とした研修カリキュラムを検討しています。

5 職場内での教育訓練

 研修センタ−で実施する集合教育とは別に、各職場内において職場内教育を実施しています。
 車掌・運転士の教育は、全乗務員を対象とした「定例訓練」「業務研究会」を実施するとともに、運転士においては、車両故障や踏切事故などの異常時を再現できる「乗務員訓練用シミュレ−タ」を導入し、臨場感ある状況の中で業務知識・取扱方及び技術の習得に取り組んでいます。
 また、乗務員以外の社員の職場内教育については、異常時の取扱方及び復旧訓練、若手社員の技術力向上並びに技術継承等を目的とした講習会・競技会などを開催するとともに、各職種間の連携強化等を図る目的で運転士・車掌・駅・指令等による合同訓練会なども開催しています。

6 異常時対応訓練

■ 総合事故対策訓練
 列車脱線など、大規模な事故を想定し警察、消防等関係機関の協力を得て、各系統の社員が合同で行う総合事故対策訓練を毎年1回実施しています。
 2018年度は12月6日に高知運転所構内で実施し約250名が参加しました。訓練では、踏切内に進入する自動車と衝突し列車が脱線するとともに、乗客及び自動車運転手が負傷するという設定のもと、列車防護の取扱方やお客様の避難誘導、消防・警察等関係機関との連携、油圧ジャッキによる脱線車両の載線訓練を行いました。また、線路の保守等に使用する「マルチプルタイタンパ−」を使用した作業訓練なども実施しました。

■ 異常時列車取扱訓練会
 異常時における正確な運転取扱いと状況に応じた対応能力の向上を図るため、管理駅単位の11駅において異常時列車取扱訓練会を実施しています。訓練の実施においては、異常時の取り扱いに精通しているベテラン社員から若手社員への知識及び技術の継承を行うとともに、運転関係及び工務関係社員の協力や現車・現物を使用するなど、実場面に近い状況を設定することで、より実態に即した訓練を実施しています。
■ 地震・津波発生時の避難誘導訓練
 大地震が発生し、大津波警報が発表された場合を想定して『地震・津波発生時の避難誘導訓練』を2005年度から実施し、2018年11月 高知地区で開催した訓練において21回目の開催となりました。
 2018年度は11月2日土讃線 多ノ郷駅構内で実施し、地元中学生約60名にご参加をいただくとともに、地震を受け一旦停車後、安全を確かめながら運転を継続し、再度、停車後から乗客の避難誘導を行うなど、貴重な訓練となりました。
■ 本四備讃線におけるJR 四国・JR 西日本合同訓練
 本四備讃線にあるJR四国とJR西日本の境界駅付近において、車両故障等が発生し列車運行が不能となった際に、お客様を安全かつ迅速に避難誘導すること及び会社間における応援・協力体制に関する対応等の確認を目的として、2018年9月14日の深夜から早朝にかけ、本四備讃線における合同訓練を実施しました。
 この訓練は3年に1度開催しており、今回の訓練では、児島駅の四国方で前途運転不能となった列車からの、お客様の避難誘導や児島駅から救援列車を運転し異車種間で特殊中間連結器を使用し、連結作業を行い児島駅に収容する設定で実施しました。
 関係機関及び両社の社員等、総勢約150名が参加し実施しました。
■ ナイス訓練賞
 2012年4月より、各職場の自主的な異常時訓練等の活性化及び異常時対応能力の向上を推進する目的として、『ナイス訓練賞』を新設しました。各職場が独自の創意工夫により実施した異常時訓練(お客さま対応訓練を含む)などであって、その内容が安全推進委員会等で紹介された中から、社長及び鉄道事業本部長が他箇所の模範と認めたものに授与することとしています。
 2018年度は、12箇所の取り組みに対し表彰を行いました。

  安全を支える人材の確保

 安全確保のためには、鉄道固有の知識・技術の維持・継承を図るとともに、安全・事故防止に関する教育・訓練に取り組むことが重要と考えています。また、技術断層を防ぐための計画的な新規採用の実施や、退職者を活用した技術継承にも取り組んでいます。

  安全関連設備投資

 鉄道施設の整備については、老朽設備の取替えを計画的に進めるほか、安全で安定した輸送の確保、旅客サービスの改善、業務の効率化等に必要な投資を計画的かつ重点的に実施しています。